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大学職員に「同一労働同一賃金」はありえるのか?

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いよいよ2019年4月より、働き方改革関連法が施行されます。改正労働基準法では有休義務化など注目度の高い変更点が目白押しですが、その中で目を引く存在なのが「同一労働同一賃金」の導入です。

正規労働者と非正規労働者の給与格差の問題は、非常勤教職員を多数抱える大学業界においても無関心ではいられません。そこで今回は、立教女学院に対する雇い止め訴訟の判例を紹介しつつ、大学職員に同一労働同一賃金はありえるのかを考える機会にしていきたいと思います。

事案の概要(立教女学院雇い止め訴訟)

当裁判の概要は以下のとおりです。判決文を要約します。

原告は平成13年6月29日から派遣労働者として立教女学院短期大学部事務部総務課で就労したあと、平成16年6月1日から1年間の雇用契約で嘱託職員に採用され、その後2度にわたって契約が更新されたものの、平成19年5月31日をもって以降の契約更新がなされなかった。

原告の請求は以下の2点である。

  1.  客観的に合理的な理由のない雇い止めであり、地位の確認及び雇い止め後の賃金の支払いを求める。
  2. さらに、専任職員と同等又はそれ以上の業務に従事していたにもかかわらず、その賃金の点で著しい格差があり、損害賠償請求として当該賃金差額相当分の支払いを求める。

判決では請求の1つ目(地位確認と雇い止め後の給与支払い)が認められたため、メディアでは原告勝訴として報じられました。

一方で、専任職員との賃金格差については請求を棄却され、主張は認められませんでした。

専任職員との賃金差額相当分の支払いが却下された理由

すこし長いですが、判決文から該当部分を抜粋します。読みやすいよう、多少の修正は加えております。

争点は「公の秩序」

原告は専任職員と同一又はそれ以上の責任のある業務に従事し、その勤務形態及び業務内容が専任職員と同一であったにもかかわらず、立教女学院は嘱託職員である原告に対し、専任職員と比して著しく低い賃金しか支給しなかったところ、このような取り扱いは、労働基準法が禁止する労働者の社会的身分を理由とする差別的な取り扱いに当たり、また、公の秩序となっている同一労働同一賃金原則に違反すると主張する。

しかしながら、専任職員と嘱託職員という雇用形態は労働基準法の定める「社会的身分」には当たらないと考えられ、このような雇用形態の違いからその賃金面に差異が生じたとしても、同法に違反するということはできない。

また、我が国においては、未だ、長期雇用が予定されている労働者と短期雇用が予定されている有期雇用労働者との間に単純に同一労働同一賃金原則が適用されるとすることが公の秩序となっているとはいえない。

前述のとおり、立教女学院においては、専任職員は長期雇用が予定されているのに対し、嘱託職員は短期雇用が予定されているところ、専任職員の場合には、長期雇用を前提に、配置換え等により種々の経験を重ね、将来幹部職員となることが期待されており、これを受け、その賃金体系についても、年功序列型賃金体系、すなわち、労働者の賃金がその従事した労働の質と量のみによって決定されるわけでなく、年齢、学歴、勤続年数、企業貢献度、労働者の勤労意欲の喚起等が考慮され、当該労働者に対する将来の期待を含めて決定されている以上、このような観点から嘱託職員の賃金との間に一定の差異が生じることはやむを得ず、原告の主張するような賃金の差異があるからといって公の秩序に反するということはできない。

原告は専任職員と嘱託職員の給与格差について、労働基準法違反、さらに、公の秩序にも反すると訴えましたが、裁判所はいずれの理由も退けました。

このことを言い換えるならば、判決当時の労働基準法は専任職員と嘱託職員の給与格差を禁じておらず、また、社会通念(人間社会における暗黙の了解事項)にも反していない、ということとなります。

今後の司法が賃金格差問題をどのように裁くのかは判例を待ちますが、政府が公表している「同一労働同一賃金ガイドライン」では、賃金格差は「将来の期待」という抽象的理由では説明できないとしています。

その上で、過去の判例で示された「公の秩序」というものが、法改正によって変わったと判断されるのか?という点も注目されるところでしょう。

大学職員に「同一労働同一賃金」はありえるのか

大学の中では、有期雇用の教職員が多く働いています。従来から多いのが非常勤講師。そして、昨今増えつつある契約事務職員です。

非常勤講師ってブラックなの?

まず、非常勤講師と専任教員の違いについて。

非常勤と専任の違いはわりと明確です。

非常勤講師は担当授業で講義をするのが仕事ですから、少なくとも学生目線では、専任教員と非常勤講師の違いはありません。

その一方で、非常勤講師の業務には、教授会への参加や各種の校務、また、研究活動などは含まれていません。さらに、専任教員の給与の計算方法は、授業とその他(研究・校務等)で区別されていないため、処遇の違いを単純に比較することはできません。

なお、ひとくちに非常勤講師と言っても、それぞれの置かれている境遇は様々です。

例えば、ある大学の専任教員が他大学で非常勤講師として講義を持っているケースもあれば、専任教員が定年退職後に非常勤講師として働いているケースもたくさんあります。他に本業を持っている人を実務家として招いているケースもありますね。

なので、一般にメディア等で報じられているような、「非常勤講師で糊口をしのいでいる」というブラックなイメージは、ただの取材不足あるいは偏向報道であると思っています。

事務職では「年功俸給」が壁

一方で、契約職員と専任職員の業務の違いは、大学教員ほど明確ではありません。

契約職員も専任職員も同じ始業時間・終業時間で働き、同じオフィスで机を並べて働いています。当然、ある時間帯に限れば、契約職員と専任職員が同じ作業をしているということもあるでしょう。新たに採用された(あるいは他部署から異動してきた)専任職員が、特定分野において契約職員よりスキルが劣るのも当然です。

さらに言えば、専任職員どうしであっても、年功序列による年齢間の賃金格差があります。課長職よりもヒラ職員の方が高収入というケースもザラにあります。契約職員と専任職員の賃金格差以上に、専任職員間の賃金格差は説明困難です。

派遣職員に関しては、能力では説明のつかない賃金格差があります。派遣職員は全く同じ仕事をしていても、派遣元が異なれば時給も違いますし、同じ派遣元であっても契約時点によって時給が異なるという場合もあります。

上記のとおり、大学組織の中では賃金にまつわる不平等の可能性が多分にありうるわけですが、契約職員の同一労働同一賃金を阻んでいる壁が、専任職員に適用されている年功俸給です。

専任職員の年功俸給と契約職員の同一労働同一賃金を併存させようとすると、「30歳と40歳の2名の専任職員と同じ業務を契約職員が担当した場合、どちらの専任職員の給与に合わせるのか?」というような問題が生じます。

したがって、契約職員と専任職員の間で同一労働同一賃金を実現するためには、おそらく専任職員に関する厳密な能力主義給与体系が前提になるのではないかと思っています。

能力成果査定という泥沼に足を踏み入れるのか、専任職員のパフォーマンスを上げて「オール専任」体制を目指すのか、同一労働同一賃金は専任職員の在り方を問うものだと考えています。

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